専門家によるランニング講座 ランニングとはどんな競技なのか

運動生理学から見たランニング ランニングとはどんな競技なのか

未曽有のランニングブーム。
でも、ダラダラと走るだけじゃ嫌だ!せっかくなら楽しく、速く、長く走りたい。
そんなあなたのためにスポーツ科学の力が徹底サポート!
まず、初回の今回は、「ランニングってスポーツサイエンス的にはどういうものなの?」ということから。
それを知っているのと知らないのでは1年後のあなたに雲泥の差が出ますよ!



楽しく、速く、長く走りたい! ランニングってどんなもの?

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巷では「美ジョガー」なる言葉が生まれるほどの、未曽有のランニングブーム。
誰でも・いつでも・どこでも手軽に始められるランニングは今や最も競技人口の多いエクササイズの一つといえるのではないでしょうか?

単に、ダイエットや健康のため、少し運動でも…と思ってはじめたランニング。知らぬ間に、その爽快感にハマってしまい「もっと速く走りたい」「もっと長く走りたい」そう考えるようになる方も多くいます。私のパーソナルセッションのお客様の中にも、そのような方が多くいらっしゃいます。

本コラムを読んでいる、あなたもそうなのでは?
本コラムは、そんな「もっと速く走りたい」「もっと長く走りたい」という願いを叶えるべくランニングに関する様々な情報を、スポーツサイエンスの見地から皆様にお知らせしたいと思い、書いていきたいと考えています

まず、「速く走る」ということはどういう事かを考えていきましょう。
ひとえに速く走るといっても、オリンピックの陸上競技を見ていても分かるように、100mスプリントとマラソンの42.195kmの「速く走る」とでは異なります。
100mスプリントが全力で走る瞬発力を比べる競技なら、マラソンは42.195kmという長い距離を「ある一定の強度」で走り切る持久力を競う競技なのです。

マラソンやトライアスロンは、「乳酸」の出ない最大強度で競走する競技

ではその「ある一定の強度」とはどのような強度なのでしょうか?
それは「乳酸」の出ない強度なのです。
乳酸の話をする前に、少しヒトのからだのエネルギー供給について簡単に説明しましょう。ヒトのエネルギー供給機構には簡単に言うと2つあります。

(1)大きいエネルギーを作り出す代わりに、短い時間しか作り続けられない機構

(2)小さいエネルギーですが、長い時間エネルギーを作り続けられる機構

(1)は100mスプリント、(2)はマラソンのメインのエネルギー供給機構になります。(1)のエネルギー機構は、エネルギーを作り出す際に乳酸を生成します。

さらに深く!!
もっと詳しく知りたい方のために、ヒトのエネルギー供給機構について少し深く書きたいと思います。お腹いっぱいのヒトは飛ばしても大丈夫です(笑)

ヒトのエネルギー供給はエネルギーの生成に酸素を必要とする「有酸素性エネルギー代謝」と酸素を必要としない「無酸素性エネルギー代謝」の2つに分けることができます。よく有酸素運動と無酸素運動といいますよね。しかし、注意しないといけないのは、有酸素=息をする、無酸素=息をしない運動と思われがちですか、息をしない運動など存在しません。死んじゃいますよね。呼吸の話ではなくエネルギーの供給の仕方のことなのです。

有酸素性エネルギー代謝は、エネルギー生産能力は小さいのですが長時間エクササイズを続けることができます。一方、無酸素性エネルギー代謝は、エネルギー生産能力が高く、短い時間で大きなエネルギーを作り出せるのですが、代謝産物として「乳酸」を生成してしまい、筋肉内を酸性に傾けるので、同じ強度で持続的に筋が動かない状態になってしまうのです。

さて、ここで問題なのですが、このエネルギーはいったいどこから来るのでしょう?

答えは「食べ物・飲み物」からです。当たり前のことを言ってしまいました。しかし、食べたもの、飲んだものが全て一緒くたにエネルギーとして使われるわけではありません。摂取した飲食物には「糖質」・「タンパク質」・「脂質」・「ミネラル」・「ビタミン」の5種が含まれています。いわゆる五大栄養素です。この中でヒトのエネルギー源となるのは「糖質」「脂質」の2種類です。この2種によってほとんどが賄われます。

糖質=無酸素性エネルギー代謝、脂質=有酸素性エネルギー代謝と区別できていれば、考え方は簡単なのですが実はそうではないのです。脂質は全て有酸素性エネルギー代謝によって使用されるのですが、糖質はその運動強度によって無酸素性エネルギー代謝と有酸素性エネルギー代謝に分かれます。

有酸素性エネルギー代謝による運動(有酸素運動)は、理論上、脂質と水と酸素が体内に供給できる限り、ずっと動き続けられるのに対し、無酸素性エネルギー代謝による運動(無酸素運動)はだいたい40秒くらいが限界といわれています。

糖質の代謝は、ウォーキングなど強度が低い運動だとゆっくりとしたエネルギー供給で間に合うので有酸素エネルギー代謝でエネルギーを作り出すのですが、ダッシュやジャンプなど短時間で大きな力が必要になった時などは、無酸素性エネルギー代謝によってエネルギーを使ってしまうのです。

糖質を摂取しないと、無酸素性のエネルギー代謝を稼働できないので、食事で糖質を摂取することが重要であることはここからもわかりますよね。

乳酸は疲労の原因じゃない!

「乳酸」は少し前まで疲労の原因物質だと考えられてきましたが、実は乳酸は疲労物質ではなく、エネルギーに基質であることがわかりました。乳酸は、疲労の直接的な原因ではないのですが、高い強度で運動を続けると、乳酸が蓄積され、筋内が酸性に傾き、それによって筋肉が収縮できなくなってしまうのです。

ランナーのみなさんならお分かりかと思いますが、全力疾走ではずっと走れませんよね?それはエネルギー供給が間に合わず、筋内が酸性に傾いてしまい、筋肉を動かせなくなるからなのです。逆に言えば、理論上、乳酸が産生されない強度(走る速度)ではずっと動き続けることができます。

ということは、乳酸が蓄積されていくポイントの強度(速度)が上がれば、その速度でずっと走る事ができるという事なので、ランニングのタイムは上がるということになります。
これこそがキーなのです。この乳酸の蓄積される時の強度(速度)というのは、トレーニングによって変えることができるのです。

トレーニングによってこう変わる!

乳酸の量と走る速さの関係

図を見てください。縦軸を乳酸の量、横軸を強度(走る速度)とします。グレーのラインはトレーニング前、つまり今のあなた。青いラインはトレーニング後、つまりレベルアップしたあなたです。オレンジのラインは乳酸の蓄積の程度が急激に大きくなる変曲点です、つまり、前述した(2)のエネルギー供給機構から(1)のエネルギー供給機構へとシフトしたということです。

さらに言い換えるならば、オレンジのライン下の速度ならばずっと走れるということになります。トレーニングをすると、乳酸の蓄積の傾きが緩くなり、オレンジのラインに達する強度(走る速度)が、トレーニング前はA(Ex.時速8Km)であったのが、B(Ex.時速12Km)の速度でもずっと走れるようになるのです。

では、乳酸が産生されにくいからだ、または乳酸を素早く除去してくれるからだを作るにはどうすればいいのでしょうか?
それには3つ方法があります。

1.ミトコンドリアの数を増やす

2.筋トレをする

3.エネルギーコストを高める

次回はこの3つの方法について詳しく述べていきたいと思います。お楽しみに!

次回予告
楽しく、速く、長く走るためには、乳酸を溜めない体を作ること!
そのためには1.ミトコンドリアの数を増やす2.筋トレをする3.エネルギーコストを高める

次回はこの3つの方法について詳しく述べていきたいと思います。お楽しみに!



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