スロトレをする

スロトレをする

 今回は、ただの筋トレではなく、より「乳酸」に焦点を絞って、工夫を凝らしたトレーニング方法をご紹介いたします。
前回
は、ランニングのためにも筋トレが非常に効果的であるということを書かせていただきました。筋肉を発達させる刺激は大きく分けて、「機械的刺激」と「代謝的刺激」の二つがあります!
当コラムで毎度取り上げている「乳酸」は代謝的刺激の末に蓄積される物質です。ですので、より効率的に「乳酸」を蓄積させるには代謝的刺激に照準を絞った筋トレをすればいいのです!



ランナーにもスロトレがオススメ!

 「マラソンなのに筋トレ!?カラダ重くなってしまうんじゃ・・・」と思ったランナーの方もいらっしゃるのではないでしょうか?確かに、走るためにあまり必要ではない筋肉をつけ過ぎると、無駄な負荷を背負って走っているのと同じことになるのでランニングに悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。

しかし、近年、スポーツ科学の発展とともに筋トレを長距離走の練習メニューに取り入れる有用性が確認され、それを導入するトップランナーが増えてきました。

その代表がイギリスのポーラ・ラドクリフ選手です。大股で走るストライド走法で、2002年のシカゴマラソン大会、2003年のロンドンマラソンで世界記録を二度も樹立したのは記憶に新しいところです。2004年アテネ五輪の金メダリスト野口みずき選手も筋力トレーニングを取り入れていることで有名です。もはや、マラソンのトップ選手がトレーニングで筋トレを行うことは当たり前になりつつあります。



図AおよびBは、健康な若い男性24人を、各群の平均身長・平均体重がほぼ同じになるように8人ずつ「スロトレ群」、「高強度トレーニング群」、「低強度トレーニング群(スロトレと同じ強度(負荷)の通常トレーニング)」の3つに分けて、1回のトレーニング前後の血中乳酸値の変化(図A)と12週間(3回/週)のトレーニングを行った前後での筋肉の太さの変化(図B)を調べたグラフです。

図Aを見ると、スロトレと高強度トレーニングは低強度トレーニングに比べてトレーニング直後から5分後にわたって血液中の乳酸濃度が高くなっているのが分かります。

図Bを見ると、低強度トレーニングを12週間続けても筋肉は太くなっていませんが、スロトレと高強度トレーニングでは筋肉が太くなっていると分かります。更に、スロトレと高強度トレーニングは、低強度トレーニングよりも筋肉が太くなっている事が分かります。

以上のように、スロトレは高負荷のトレーニングと同じように乳酸が蓄積され(A)ほぼ同じぐらいのトレーニング効果である(B)ことが分かります。

†―スロトレ群は低強度群に比べて、トレーニング後の血中乳酸濃度が有意に高くなった事を示します
††―高強度群は低強度群に比べて、トレーニング後の血中乳酸濃度が有意に高くなった事を示します
※―スロトレ群・高強度群は低強度群に比べて、トレーニング期間後に有意に筋肉が太くなった事を示します
$―スロトレ群・高強度群はトレーニング前に比べて、トレーニング期間後に有意に筋肉が太くなった事を示します
[Tanimoto and Ishii.2006より改変]

また、2012年のPhillipsらの研究では、通常のトレーニングよりゆっくりとした速度でトレーニングを行なう筋トレの方がミトコンドリア生成に重要なタンパクである「PGC-1α」(第2回コラム参照)や筋肉の合成に関するタンパクの発現量が多くなることもわかっています。

スロトレの筋肥大効果のメカニズムについて

 なぜ、ゆっくりと動かすだけで、小さな負荷でも高いトレーニング効果が得られるのでしょうか?そのメカニズムを探ってみましょう!

これまでは、スロトレを行なっている間は筋肉が収縮し続けるので、血管を外側から圧迫して、結果として血流が阻害された状態になり、筋内が低酸素状態になることによる代謝的な刺激で筋肉が成長すると考えられていました。

しかし、最新の研究から、このスロトレのメカニズムに関して従来と考えが変わってきました。最近では、高齢者に対するスロトレの研究(Watanabe et al.2012)やカナダの研究チームの研究(Phillips et al.2012)によって、筋内の低酸素状態というのは必ずしも必要ではないということが明らかになってきたのです。

高齢者の場合は若齢者と異なり、スロトレを行なっても筋内で酸素状態の変化が起こらないにもかかわらず、筋肉が太くなる事実が確認されたのです。そこで、収縮時間の長さが筋肥大のシグナルとなり、刺激を引き起こしているのではないかという考えがでてきました。未だ、スロトレの筋肥大効果に対するメカニズムは完全には解明されていません。今後の研究展開がありましたら、随時報告していきたいと思います。

スロトレはいいことづくし!

 スロトレの生理的メカニズムがまだはっきりと解明されていないとしても、スロトレが効果的であることは明らかです。
スロトレを行えば、自重程度の軽い負荷でも十分に高い筋トレ効果が得られるのです。これは確かな事実です。必ずしもジムに行って重いバーベル等を持ち上げたりする必要は無く、ランニングの前後などに一人でも仲間とでも十分に効果的な筋肉トレーニングができるのです。さらに、機械的な刺激が、通常の重いバーベルを扱うトレーニングと異なり小さいので、膝や腰などの関節への負担は小さくなります。したがってトレーニングによるケガのリスクも小さくなります。
いいことづくしのトレーニングを繰り返すことによって、(ミトコンドリアの増加などにより)筋肉の酸化緩衝能力が増し、より酸素を使う能力が高まるのです。そうすれば、より快適にランニングができるようになるはずです!みなさんも是非スロトレをやってみてください!

次のページは、具体的なスロトレ方法
をご紹介いたします。


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