筋トレをする

筋トレをする

  前回は乳酸の蓄積しにくいからだを作るための3つの方法(1. ミトコンドリアの数を増やす 2. 筋トレをする 3. ランニングのエネルギーコストパフォーマンスを高める)のうちの「1. ミトコンドリアを増やす」について紹介させていただきました。

今回は、「2. 筋トレをする」について述べていきたいと思います。



マラソンに筋トレって必要?

 「マラソンなのに筋トレ!?カラダ重くなってしまうんじゃ・・・」と思ったランナーの方もいらっしゃるのではないでしょうか?確かに、走るためにあまり必要ではない筋肉をつけ過ぎると、無駄な負荷を背負って走っているのと同じことになるのでランニングに悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。

しかし、近年、スポーツ科学の発展とともに筋トレを長距離走の練習メニューに取り入れる有用性が確認され、それを導入するトップランナーが増えてきました。

その代表がイギリスのポーラ・ラドクリフ選手です。大股で走るストライド走法で、2002年のシカゴマラソン大会、2003年のロンドンマラソンで世界記録を二度も樹立したのは記憶に新しいところです。2004年アテネ五輪の金メダリスト野口みずき選手も筋力トレーニングを取り入れていることで有名です。もはや、マラソンのトップ選手がトレーニングで筋トレを行うことは当たり前になりつつあります。

なぜ筋トレするといいの?

 では、なぜ筋トレをするといいのでしょうか?ランナーの筋トレの目的は2つあり、「筋持久力」を高めること、そして「筋力」を高めることです。この二つは不可分なものですが、筋持久力は筋内のミトコンドリアを増やすことによって獲得でき(前回参照
)、筋力は筋肉が太くなること、もしくは筋肉をしっかり使えるようになることによって獲得できます。

※「筋肉をしっかり使えるようになる」:筋肉組織は複数の筋線維が束になって出来ています。その個々の筋線維の動きをコントロールしている神経を通じて、脳からの「動かそう!」という命令(意識)のとおりに、多くの筋線維を同期させて強い力を比較的簡単に発揮することができるようになる、という意味です。運動不足が続くと、思い通りにさっとカラダが動かなくなったりする原因の一つです。意識して筋肉を高い強度で動かすことを繰り返していると、「筋肉をしっかり使えるようになる」のです!

筋肉が太くなること・筋肉をしっかり使えるようになることがランニングとどのように関係あるのか簡単に説明します。トレーニングによって脚の筋力がつくと、体重が変わらなくとも、脚に対する相対的な負荷が軽くなるので、速く長時間走り続けることができるようになるのです。体が軽くなると軽快に走れることは簡単に想像できますよね。

相対的な負荷を軽くして走れるようになると、乳酸が蓄積されるまでの余地が大きくなり、高い強度すなわち速く走れるようになるのです(第一回参照
)。

どの様なトレーニングをすればいいの?

 では、具体的にどのような筋力トレーニングがいいのでしょうか?それは、前回紹介した、ミトコンドリアを増やすのに有効なトレーニングと同様に、乳酸が蓄積されるような運動強度のトレーニングを繰り返し行うメニューが効果的です。

表1 トレーニング目的と負荷

目的
負荷
回数/セット
セット間のインターバル
乳酸の蓄積しやすさ
筋力向上
最大負荷の90%〜
1〜5回
長い(180秒〜)
少ない
筋肥大
最大負荷の70〜80%
8〜12回
中くらい(60〜90秒)
中くらい
筋持久力向上
最大負荷の50%程度
20回〜
短い(30秒程度)
多い

 乳酸をより効果的に蓄積させるには、回数を多く反復できる程度(20-30回くらい)の比較的軽い負荷で、インターバルを短くして2-3セット行うのがいいでしょう。このようなトレーニングにより、筋持久力を向上させることができます。(表1の赤枠部分)

乳酸を感じてみよう

 ところで、乳酸の蓄積が始まるとどんな状態になるかご存知でしょうか?乳酸が溜まってきたという感覚を簡単に味わえる方法をご紹介しましょう。

壁や柱などを支えにして片足で立ち、かかとの上げ下げをゆっくり50回ほど行ってみてください。(無理はしないで下さい。続けられなくなったら、やめて下さい。)30回を過ぎたあたりから、ふくらはぎがすごく熱く痛くなってきます。この痛みの感覚こそが乳酸が蓄積されてきた証拠なのです。この症状は乳酸が溜まることにより、筋内の状態が酸性に変化し、ヒスタミンやブラジキニン、プロスタグランジンなどの痛み物質が分泌されることを示しています。

トレーニングを行うべき部位

 トレーニングを行う身体部位はランニングに必要な脚の筋肉、ランニング中にからだを支える筋肉を狙って行うのが効果的です。上述のとおり、必要性の低い筋肉を鍛えるのは、単に負荷を増やすだけですからね。

表2 トレーニングを行う身体部位

ランニングに必要な脚の筋肉
大腿四頭筋
股の前の部分
ハムストリング
股の裏の部分
大殿筋
お尻全体
ヒラメ筋・腓腹筋
ふくらはぎ
ランニング中からだを支える筋肉
腹直筋
お腹(みぞおちから下腹部)
(前からからだを支える)
脊柱起立筋
背骨の両サイドにある柱
(後ろからからだを支える)


次のページは、具体的なトレーニング方法
をご紹介いたします。


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