専門家によるランニング講座 オーバートレーニング

専門家によるランニング講座 ランニングにおけるオーバートレーニング」

頑張り屋のランナーさん!無理を重ねるとカラダには大きな負担がかかります。快適なランナー生活を送ってもらうために、疲労科学の専門家が正しい知識を提供します!



ランニングと疲労

ランニングと疲労

「走っても走ってもパフォーマンスが上がらない。」「走っても爽快感より疲労感の方が大きい。」と感じたことがあるランナーは少なくないと思います。ちょっとした休養や、栄養補給を行うことで疲労感が改善する人もいると思いますが、疲労が蓄積して慢性疲労状態になっている人もいるかもしれません。
ひとことに疲労といっても、様々な要因が複雑に重なって症状が出てくるものです。神経系の動きの低下、疲労物質(乳酸など)の蓄積、内臓疲労、筋繊維の破壊(筋肉痛)、鉄欠乏性貧血など、多くの要因が考えられます。
今回は、その中でも疲労が蓄積することで起きる「オーバートレーニング症候群」について話をしたいと思います。

オーバートレーニング症候群とは?

オーバートレーニング症候群とは、「過剰なトレーニングによってカラダが疲労状態となり、短期間の休息やトレーニング量を減らしても、簡単には疲労が回復しなくなった状態」のことを言います。身体の健康バランスが乱れて、ランニングへの気力も衰え、パフォーマンスが向上しないばかりか低下する状態に陥ります。慢性疲労症候群、燃え尽き症候群、あるいはスタルネスとも言われます。
頑張ってトレーニングを続けるうちに、いつの間にか疲労が蓄積してオーバートレーニングの状態のままでいると、怪我につながる危険性もあります。激しいトレーニングを行う選手の1~2割の人が陥る可能性があるとも言われており、一般のランナーにも起こりえる症状です。

原因は何?

原因としては、過度な運動負荷に加えて疲労回復に必要な休養と適切な栄養をとらなかったことが考えられます。

過度な運動負荷や急激な運動量の増加

過密なトレーニングスケジュール

休養不足、睡眠不足

必要な栄養やエネルギーの不足

体調不良の際に行う、不適切なトレーニング

オーバートレーニング症候群の早期の段階には、オーバーリーチングと呼ばれる状態があります。これは、パフォーマンスが十分に発揮できない状態ですが、短期間(2~3日、長くても1~2週間)でこの状態は改善すると言われており、このオーバーリーチングの時点でトレーニング量を減らすなど、短期の休養をとることが大切です。

大会出場を目指して一生懸命に練習をしているのに、パフォーマンスが下がっているように感じるときは、あまり無理をせず休養を取る勇気が必要です。最近では、スマートフォンなどで、日々のランニングのパフォーマンスの記録ができるものがあるので、日々の変化を管理するために利用してみると良いと思います。

一旦、オーバートレーニング症候群になってしまうと回復には時間がかかります。1ヶ月~年の単位の時間が必要と言われており、完全に回復できない例もあります。また、オーバートレーニング症候群の状態になると、動悸、息切れ、立ちくらみ、胸痛、手足のしびれ、体重減少、不眠。易興奮性、いらだち、不安、憂うつなどの多彩な症状を呈することもあります。これらは
疲労問診表

にてチェックすることも可能ですが、このような症状が出た場合は、専門家(日本体育協会公認スポーツドクター等)に相談することもひとつの方法です。

オーバートレーニング症候群にならないために

オーバートレーニングを予防するにはどうすればよいのでしょうか。「慢性疲労をチェックすることはできないのか?」と思われる人もいると思いますが、今のところオーバートレーニング症候群であると一目で判断できるものはありません。しかし、いろんな症状が現れます。呼吸数の増加、運動の効率の低下、体重の減少、運動時血中乳酸の増加、口渇感、食欲減退、安静・運動・回復時の心拍数の変化、臥位と立位時の心拍数の差の拡大、基礎体温の上昇などがあります。しかし、これらの症状の現れ方には個人差もありますし、運動の質や量の違いによっても異なります。

それでは「どのようにして日頃オーバートレーニングかどうかをチェックすればよいのか」ということになります。誰でもできる基本的な方法としては、トレーニング日誌(記録)をつけるという方法があります。先にも話したとおり、最近はスマートフォンなどで簡易に記録することが出来るようになっているのでお勧めです。トレーニングの質・量の変化や達成度、意欲、体重・体温の変化、臥位と立位の安静時心拍数の違い、睡眠の時間と質などを記録して、それらの変化に注目します。マイナス要素と思われる傾向が顕著に現れてきたら要注意です。早めに休養をとり栄養状態を見直すことで元に戻すようにしましょう。

オーバートレーニング症候群に陥ると、長期間に渡って記録の向上が見られないばかりか、極端な場合は選手生命をダメにすることさえあります。一般のランナーでオーバートレーニング症候群に陥る人は少ないですが、長く楽しく安全にランニング生活を送るうえで、是非知っておいて欲しいことです。オーバートレーニング症候群の予防は、適切な運動と栄養・休養の3つのバランスです。

なお、休養にも、疲労を取り除くための完全休養と身体をほぐすための積極的休養があります。トレーニングをしないで身体を休める完全休養だけでなく、ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなどで血行をよくしたり、筋肉をほぐしたりすることで疲労回復を促進させることを積極的休養といいます。個人差や疲労の程度にもよりますが、自分の状態に合わせて、両方を組み合わせることが大切です。
しかし、オーバートレーニング症候群と診断された場合は、きっぱりとトレーニングを休んで元の状態へ戻しましょう。


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